創作– category –
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【擬音短編集】むくむくと、そこにいる
修学旅行、ただいま夜。学校の予定も無事終わって、みんな布団の中にもぐりこんでいる。 どうにも寝付けない俺は、同室である三人の様子を観察することにする。 イノウエは「すぅっ」と布団をふっくらませ、また静かに沈んでいく。普段から、落ち着きのあ... -
【擬音短編集】ぎょろりぎょろり
彼はぎょろりぎょろりと周りを見渡している。 新月の暗夜の中、光に注意しているかのように目を光らせている。 どうやら、彼は盗人らしい。 こっそりと忍び込むために細心の注意を払っているのである。であるからに、見える人からしたら何とも珍妙な姿に思... -
【擬音短編集】ぴしゃん、そして、ぴしゃん
「ぴしゃん!」 何が起きたか今私の頭がフル回転して、状況を把握しようとしている。 ――そうだ、目の前にいる、彼女に頬を平手打ちされたのだ。 ――なぜ? ――わからない。 「あなたなんか、知らない!」そう吐き捨てられたと思いきや、彼女は走り去っていく... -
【擬音短編集】ぎっちら、ぎっちらこ
私は古い民家を探して、移り住もうとしている。片田舎で、古い民家でゆったりと過ごすことを夢見た私は、物件探し中だ。 今回紹介された民家も、随分と古い家だ。 床の上にのると、ぎぃっと音を立てる。不動産屋さんは手慣れているのか、ぎっちらえっちら... -
【擬音短編集】びたびたと染みる
「通り雨にしては強すぎるよぉ~!」私はお店の前に駆け込んだ。 そして、びたびたになったマフラーをほどいて、マフラーの状態を確認してみる。 これは…。何ともひどい状況だった。 カシミヤの生地が台無しと言わんばかりにびたびたに濡れている。「びち... -
【擬音短編集】どでっと、支えたい
「あぁ~、疲れたぁ!」彼女は力尽きたようにベッドに、どでっと倒れ込んだ。 「仕事がこんなにもつらい事なんだって知らなかったよ~!」新社会人になって早半年、仕事を覚えることは多少覚えてきたけど、やることが多すぎる。 「これで手取りもわずかな... -
【擬音短編集】キンヨロー!
「ぴーひょろひょろ」遠くからトンビの鳴き声が聞こえてくる。 何とも情けない声だ。 だってそうだろ?鷹の仲間で、勇猛果敢な出で立ち。肝心の鳴き声は「ぴーひょろひょろ」? この差はあまりにも大きい。 ピーシャラピーシャラ踊ってるのか?そんな、情... -
【擬音短編集】すーすー、夢のむこうへ
彼女は幽体離脱をしている。 なぜそう思うのかは、わからない。 であるが私は確信している。 彼女の寝息がすぅすぅと静かに音をたてているからか?それだとだって幽体離脱していることになる。人はみな、夢という世界に幽体離脱しているのかもしれない。 ... -
【擬音短編集】へったりと、生きている
「あぁ、なんて日常は、こんなにも平凡なのだろう」私は思わず、大通りで天を仰いで唾す。 この世界というのは、やる必要のないやるべきことが多すぎる。テクノロジーが発展して、本来であれば生きる上では3~4時間も労働すれば充分生きて生きるだろうに。... -
【擬音短編集】てらてらの頬
私の家は豊かな方ではない。それに気づかされたのは、小学校に入ってからだ。 私の家にはあまり物がなくて、長く使い古されたものばかり。使えるところはダメになるまで、トコトン使うという決まりがある。であるからに、私が新しいものを欲しがろうとした... -
【擬音短編集】ダビデ像にはなれないけれど
僕は初めて、ジムというやつに来ている。友人と二人で。最初は、ムキムキマッチョな人たちばかりなのだと思っていた。僕がジムに来たきっかけは、友人に言われたからだ。 その日の前日、僕は学生の頃からの付き合いである友人に思い切って相談した。「マッ...
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