【擬音短編集】すーすー、夢のむこうへ

彼女は幽体離脱をしている。

なぜそう思うのかは、わからない。

であるが私は確信している。

彼女の寝息がすぅすぅと静かに音をたてているからか?
それだとだって幽体離脱していることになる。
人はみな、夢という世界に幽体離脱しているのかもしれない。

確実に彼女が幽体離脱をしていると感じたのは、
私が思うに、その寝息を立てるときの姿にある。

彼女の呼吸が、布団を持ち上げ、また沈む。
その時の髪のなびく動きが、
どうも「すーすー」と何物にも邪魔されない自由の象徴に見えたのだ。

それゆえ彼女は、
きっと、ここには、
いないのであろう。

眠っている彼女の頬にうっすらと触れてみる。

あぁ……、やっぱり、彼女はここにはいない。
ここにいれば、彼女はこんなにも冷たいはずないだろう?

ハッカをなめたような涼しさと、
猫なで声のような、少しくすぐったい風を感じさせる冷たさだ。

彼女は幽体離脱しているに違いない。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次