スマートフォンを見ては投げ出し、
また手に取って、すぐにまた布団に埋もれる。
誰にも連絡できなくて、誰にも連絡がこなくて、
ただ、おびえるようにくるまっていた。
「私の気持ちは、だれにも理解されないんだな……」
そう思ってしまった夜だった。
人の気持ちを100%理解することなんてできない。
それは頭では、わかっている。
だけど——
ほんのちょっぴりでもいいから、わかってほしい。
誰かに、私の声が、気持ちが、届いてほしい。
そう願ってしまう。
それって、わがままなのかな。
そんなことを考えながら、ますます言葉が喉の奥で固まっていく。
居場所がない。
どこにも、自分がいていいと思える場所が見つからない。
そんな夜だった。
どうしてこんなに苦しいのか、自分でもうまくわからなかった。
だけど、ひとつだけ確かだったのは——
「このままじゃ、潰れてしまう」
そう思った瞬間、私は布団を飛び出していた。
寒い夜だった。
外に出て、アスファルトの上に立ったとき、
なぜかわからないけど、涙がこぼれた。
そのときだった。
月の光が、私を受け入れてくれたような気がした。
言葉も、同意も、慰めもなかった。
でも、月はそこにいた。
誰にも理解されなかった夜に、
なにも言わず、ただ私を否定しないでいてくれた。
部屋には居場所がなかったけれど、
空の下には、ほんの少しの“在っていい場所”があった。
それだけで、救われた気がした。
私はあの夜、月の光に
「ここにいていいよ」と言ってもらえた気がした。
それは、誰にも気づかれないような、小さな、小さな光だったけれど、
私にとっては、世界とつながっていた感覚そのものだった。
今でもときどき、
「私には居場所がない」と思うことがある。
でもあの夜、月の光が私を受け入れてくれた記憶が、
少しだけ、心をあたためてくれる。
そして私は、もう一度だけ、
「ここにいてもいい」と思える場所を探してみようと思える。